コンタクトレンズには種類があります
 
  コンタクトレンズには大別して、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズがあり、ハードコンタクトレンズには非ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズとガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズがあります。現在一般的にハードコンタクトレンズと言えば、ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズの事をさします。ソフトコンタクトレンズには、寿命が約1年と言われている従来型(通常型)のソフトコンタクトレンズと、一般的に“使い捨て”と呼ばれる1日タイプや2週間タイプ(頻回交換レンズ)などのソフトコンタクトレンズがあります(表1)。
     
    ハードコンタクトレンズ
     1.ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズ
     2.非ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズ
ソフトコンタクトレンズ 
     1.“使い捨て”ソフトコンタクトレンズ
        1)1日使い捨てソフトコンタクトレンズ
        2)1週間(連続装用)使い捨てソフトコンタクトレンズ
        3)頻回交換ソフトコンタクトレンズ(2週間レンズ)
        4)定期交換ソフトコンタクトレンズ(1ヶ月、3ヶ月レンズ)
     2.従来型ソフトコンタクトレンズ

     表1.コンタクトレンズの種類

     
ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズにはそれぞれ特徴や長所・短所があります(表2)。ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズの最も良いところは、角膜(くろめ)に酸素を通しやすい事です。角膜には血管が無いため、血液からは酸素をとり入れる事が出来ません。従って角膜は表面から涙を通して酸素をとり入れています。コンタクトレンズはそこを覆ってしまうため、角膜の呼吸を邪魔してしまうのです。長期間にわたり角膜の呼吸を邪魔すると、角膜に血管が進入(新生血管、写真1a,b)してきたり、角膜を透明に保つ機能をもっている内皮細胞という細胞が傷害されて(写真2a,b)、角膜が混濁してしまい、恒久的な視力障害を起こす事もあります。このような障害は、ソフトコンタクトレンズや非ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズの使用者に起こりやすいトラブルです。さらにこの障害の恐ろしいところは、角膜が混濁して視力が障害されるまで、痛みなどの自覚症状が全く無いという点です。ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズは材質が一般的に酸素を通しやすく、角膜を覆う面積(レンズ直径)も小さい上に、瞬目(まばたき)とともによく動いてレンズと角膜の間の涙液交換が良好に行われるため、角膜に酸素が行きわたりやすくなっています。この他のガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズの長所としては乱視の矯正に優れている事や、紛失・破損などをしなければ比較的寿命が長く(通常約2〜3年)経済的な事、角膜などに傷害が発生したときに症状が出やすく、早く異常に気がつきやすいため、トラブルが大きくなりにくい事などが挙げられます。欠点としては、装用感(着け心地)においては、慣れるのに時間を要するなど一般的にソフトコンタクトレンズに劣る事や、ぶつかり合うような激しいスポーツなどをすると外れてしまう危険性がある事、風が吹いたりしたときにゴミが入りやすい点などが挙げられます。 
逆にソフトコンタクトレンズは、一般的に装用感に慣れるのが早く、ゴミが入りにくく、スポーツに向いている反面、ハードコンタクトレンズよりも一般的に乾燥感を感じやすいほかに、前に述べた様に酸素透過性に劣るため長時間の装用には向きません(一般的には1日12時間以内といわれています)。(注1) 乱視の矯正力は弱い(乱視用のソフトコンタクトレンズも存在しますが、限界があります)ですし、角膜などに傷害が発生したときに自覚症状が出るのが遅いので、慎重に使用しないとトラブルが大きくなりやすい傾向があります。一般的に眼科医はどちらも使える方ならば、ガス(酸素)透過性ハードコンタクトレンズをおすすめします。
   
写真1a
写真1b
角膜新生血管。角膜を慢性的な酸素欠乏状態にすると、角膜は酸素を取り入れようとして結膜から血管を引きずり込みます(新生血管)。しばしば血管の周囲には角膜の混濁を伴ないます。(24歳男性例.ソフトコンタクトレンズ歴8年、カラーレンズ17hrs/day使用.)
周囲に角膜混濁をともなう新生血管。(18歳女性例.ソフトコンタクトレンズ歴3年.)
写真2a
写真2b
正常な角膜内皮細胞所見。細胞の大きさは均一で小さく、六角形をしている。細胞密度は3268/mm
傷害された角膜内皮細胞。この細胞は分裂能を持たない細胞であるため、傷害されると周囲の細胞がその部分をカバーしようとして、細胞面積は拡大し大きさは大小不同で形状も不整形となります。細胞密度は1262/mm。細胞密度が500/mm前後になると角膜は混濁し、視力は極端に低下します。回復には角膜移植しか方法がありません。(48歳女性例.コンタクトレンズ歴28年、非ガス透過性ハードコンタクトレンズ16hrs/day使用.)

ガス(酸素)透過性ハード
コンタクトレンズ

ソフトコンタクトレンズ

角膜への酸素透過性

優れている

劣る

安全性

高い

ハードコンタクトレンズに劣る

乱視の矯正力

優れている

ハードコンタクトレンズに劣る

経済性

紛失や破損しなければ高い

ハードコンタクトレンズに劣る

装用感への慣れ方

やや時間がかかる

比較的早い

乾燥感

やや感じにくい

感じやすい

激しいスポーツをする方に

やや不向き

向いている

ゴミの入りやすさ

入りやすい

入りにくい

表2 各コンタクトレンズの特徴

注1)最近(2004年10月)シリコンハイドロゲルと呼ばれる、高い酸素透過性を有する新しい素材のソフトコンタクトレンズが発売されましたが、涙液交換による酸素供給はほとんど期待できないため、“従来のソフトコンタクトレンズ素材よりは画期的に優れた酸素透過性をもつソフトコンタクトレンズ”といった程度に考えた方がよいと考えています。