眼科専門医のいる眼科でコンタクトレンズの処方を受けましょう
  最近の報告では、わが国のコンタクトレンズ使用者は1600万人を越えたと言われており、またコンタクトレンズ量販店の乱立や、データ販売、コンタクトレンズのインターネット販売などにより、コンタクトレンズが今までよりも簡単に手に入りやすくなってきました。しかしながら、このような状況は充分な診療やケアの方法を含めた使い方の指導を受けないまま、コンタクトレンズを使用する方の増加を生み出しています。量販店隣接のクリニックには、眼科と称しながら眼科の知識や経験がほとんどない他の科の医師が常駐しているところや、アルバイトの医師ばかりでやりくりしているところが少なくありません。このようなところでは、レンズのフィッティングも不正確なことが少なくないばかりか、医学的な安全性や適応と全く関係なく、商業上の利益などを優先したコンタクトレンズ処方や販売が行われる事があります。また、医師やスタッフにも充分な眼やコンタクトレンズに関する知識がないため、取り扱いやケアの指導もおざなりになりがちです。具体的に数字を挙げてみます。2004年5月から翌2005年2月末までの10ヶ月間に、当院をコンタクト関連(処方のご希望、トラブル、相談等)で初診された患者さんのうちコンタクトレンズ装用経験者は176名いらっしゃいました。そのうち前回眼科診療所または病院で処方を受けていた方は77名(44%)、量販店や眼鏡店、インターネット販売等でコンタクトレンズを入手されていた方が99名(56%)でした。その中で受診された時点で中等症〜重症(コンタクトレンズ装用中止を要する様な)な眼のトラブルをお持ちの方が92名おられたのですが、そのうち前回眼科診療所または病院で処方を受けておられた方は26名(28%)で、残りの66名(72%)は量販店や眼鏡店、インターネット販売等でコンタクトレンズを入手されていた方々でした(表3)。大きなトラブルを起こして受診される方のうち、前回量販店や眼鏡店、インターネット販売等でコンタクトレンズを手に入れておられた方の頻度は明らかに高いのです。
     

    前回作成施設

当院初診時状況

診療所・病院

量販店・眼鏡店
ネット販売など

合計

初診時眼障害なし

38名(76%)

12名(24%)

50名

初診時軽度の眼障害あり

13名(38%)

21名(62%)

34名

初診時中等症〜重症な眼障害あり

26名(28%)

66名(72%)

92名

合計

77名(44%)

99名(56%)

176名

表3 当院初診コンタクトレンズ経験者の受診時状況と前回コンタクトレンズ作成施設
   
  至近の例でも、もともとアレルギーがあるにもかかわらず、最もトラブルの発生しやすい(正確には連続装用タイプの次ですが)従来型のソフトコンタクトレンズを、充分にケアの指導もないままに量販店隣接の眼科で処方された結果、アレルギーをこじらせて当院に駆け込んできた方がいました。このような例ではレンズを使い始めた時点でもうトラブルが発生し始めていると言っても過言ではありません。またこの半年の間に、以前に量販店や眼鏡店で長年ハードコンタクトレンズを処方されていて不具合を生じて当院を受診された方の中に円錐角膜という特殊な角膜疾患を持つ方が2名いらっしゃいました。これらの患者さんは、長年円錐角膜を見落とされてきたことになります。この他、専門医の診察を受ければコンタクトレンズ処方時に発見してもらえる可能性の高い緑内障などの重大な眼の疾患も、このようなクリニックでは見落とされてしまうでしょう。もちろん量販店隣接のクリニックの先生の中にも、コンタクトレンズに詳しい医師や眼科専門医の先生がいないわけではありませんし、事実私の存じ上げている先生の中にも量販店隣接の診療所を開設なさっておられる、コンタクトレンズ診療に熱心で優秀な先生もおられますが、私の知る限りでは(2005年12月の時点で)その確率は残念ながらそう高いものではありません。
データ販売やインターネット販売などでは、その時点でコンタクトレンズが使える眼の状態かどうかを確認せずにレンズを購入して使用するわけですから、そのレンズを使用することにより何が起こるか予測すら出来ません。コンタクトレンズは必ず専門知識を持った眼科の先生のクリニックや病院で処方してもらうようにしましょう。最近では日本眼科学会のホームページ上で眼科専門医を検索することも可能ですし、日本コンタクトレンズ学会のホームページでコンタクトレンズ学会の会員(掲載を承諾した会員のみ)を検索することも可能です。