コンタクトレンズの種類別による眼障害の発生率  
  2003年に、日本コンタクトレンズ協議会(日本コンタクトレンズ学会、日本眼科医会、日本コンタクトレンズ協会で構成)のコンタクトレンズ眼障害調査小委員会から、詳細なコンタクトレンズによる眼障害アンケート調査報告が出されました。その中にコンタクトレンズの種類別眼障害発生率の項目があります。この報告によれば、それぞれのコンタクトレンズによる眼障害発生率は、ハードコンタクトレンズ(含む酸素透過性ハードコンタクトレンズ)で、年間5.6%、1日使い捨てソフトコンタクトレンズで年間3.3%、1週間連続装用使い捨てソフトコンタクトレンズで年間15.0%、頻回交換ソフトコンタクトレンズ(2週間使い捨てソフトコンタクトレンズ)で年間9.6%、従来型ソフトコンタクトレンズで年間11.1%、全体では年間7.4%でした(表4参照)。数字を見れば、ソフトコンタクトレンズの中では、明らかに1日使い捨てソフトコンタクトレンズの眼障害発生率が低いのがわかります。これは私見ですが、頻回交換ソフトコンタクトレンズの眼障害発生率が意外に高いのは、その使われ方にあるように思います。当院を初診で訪れるコンタクトレンズ装用者の中にも、ケアの仕方が適切でない方が目立ちますし、なかには1枚のレンズを6ヶ月間使用しておみえになった兵(つわもの)もいらっしゃいました。このような使われ方が是正されればこの数字はもっと下がる可能性があると私は考えています。ケアが不適切な理由はコンタクトレンズ装用者だけの問題ではなく、コンタクトレンズを販売している側にもあると思います。当院におみえになった患者さんのなかには、量販店や眼鏡店でコンタクトレンズを作成時に2週間使い捨てレンズなら、1本タイプのケア用品(MPS)でこすり洗いをする必要はありませんといったとんでもない説明や指導をされている方もいます。
 ともあれ、この数字を見れば眼科医がお勧めするソフトコンタクトレンズの優先順位はおわかり頂けるかと思います。コンタクトレンズ量販店の中には、商業上の利益率を優先するためか従来型のソフトコンタクトレンズをお勧めするところが少なくないようですが、安全性の点から考えると眼科医の立場からはどう考えても賛成できません。コスト面でも従来型ソフトコンタクトレンズの寿命が最近では約1年といわれている事や、定期的に蛋白除去が必要でケア用品代が余計にかかることを考えると、頻回交換ソフトコンタクトレンズに優る点はほとんどないと思います。
 ただし、誤解しないで頂きたいのは絶対安全なコンタクトレンズはそれこそ絶対に無いという事です。1日使い捨てソフトコンタクトレンズでも年間3.3%の方に眼障害が発生します。当院の患者さんのなかにも1日使い捨てソフトコンタクトレンズを装用していて角膜潰瘍という重症な眼障害を起こされた方もおいでになります。コンタクトレンズを使用するからには、その種類にかかわらず慎重に使用する事が必要です。
 興味深いのは、アメリカでも同様の発表がなされているのですが、日本のほうがどの種類のコンタクトレンズにおいてもはるかに眼障害の発生率が低い事です。この差は調査法によるものかもしれませんが、私は日本ではコンタクトレンズ装用者に対して定期検診の案内が比較的浸透しているのも理由のひとつではないかと考えています。
 
     
コンタクトレンズの種類 日本での報告(2003) アメリカでの報告

HCL

5.6%    

従来型SCL

11.1%    

19.8%

1日使い捨てSCL

3.3%    

5.9%

1週間連続装用SCL

15.0%    

頻回交換(2週間)SCL

9.6%    

15.2%

合計

7.4%    

HCL:ハードコンタクトレンズ、SCL:ソフトコンタクトレンズ
   
  1) 日本コンタクトレンズ協議会 CL眼障害調査小委員会:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査.日本の眼科,74:497-507,2003
 
  2)Solomon CD,et al:A 3-year prospective study of the clinical performance of daily disposable contact lenses compared with frequent replacement and conventional daily wear contact lenses. CLAO J 22:250-257,1996  
 
表4 コンタクトレンズの種類別による眼障害の発生率