医師国家試験に合格すると、多くの医師は臨床の知識と技術を身につけるために専門分野を決めて、大学病院や研修指定病院に入ってそれぞれの専門知識を身に付けます。日本の眼科医の大部分が所属している日本眼科学会と日本眼科医会は、眼科学の進歩に応じて、眼科医の知識と医療技術を高め、また優れた眼科医の養成と生涯にわたる研鑚を図り、国民医療に貢献するために眼科専門医制度を昭和58年に発足させました。
 現在眼科専門医になるためには原則として、
 1.眼科専門医制度委員会が定めた研修施設(大学病院や一定の条件を満たした国立病院や総合病院など)で5年以上の研修を終了した者
研修内容として
1)一般初期救急医療に関する技術の習得 
2)眼科臨床に必要な基礎的知識の習得 
3)眼科診断、ことに検査に関する技能の修得 
4)眼科治療に関する技能の取得<関与する眼科手術が100例以上:外眼手術、内眼手術、およびレーザー手術が執刀者としてそれぞれ20例以上> 
5)症例検討会などへの出席 
6)眼科に関する論文を単独または筆頭著者として1編以上および学会報告を演者として2報以上が指定されている
 2.4年以上日本眼科学会会員で、かつ受験時に日本眼科医会の会員である者
の条件を満たした者に年1回の専門医試験(筆記試験および口頭試問)の受験資格が与えられ、これに合格すると眼科専門医と認定される事になります。昭和58年以前に眼科に入られた先生方には、通常専門医試験は免除されています。私は昭和60年に北里大学病院の眼科に入りましたので、このご利益は受けられず、第2回の眼科専門医試験を受け、合格しました。

 
 眼科専門医と認定されると、認定証がもらえますがその期限は5年間です。眼科専門医資格を更新するには、この5年の間に眼科専門医制度委員会が認定する学会参加や研究・学術活動(点数制)を行い、100点を取得しなければなりません。この点数は、例えば学会出席1日3点、講習会出席1時間1点、学会発表2〜4点、論文4点など事細かに規定されています。従って眼科専門医になってもその後の勉強を怠ると、専門医の資格を剥奪される事になります。眼科専門医を名乗り続けるには生涯勉強が必要ということになります。
 現在眼科医を標榜なさっている先生方の中には、種々の事情により(例えばご結婚とかご出産とかご留学とか)手術経験などの条件が満たせず、眼科医として充分な技量と知識をお持ちになりながら眼科専門医の認定をお持ちでない先生もいらっしゃいますが、少なくとも眼科専門医の認定をお持ちの先生方は、一定の眼科の知識や経験をもっているという一つの目安になります。最近コンタクトレンズ量販店に隣接したクリニックの中には、眼科医としての研修をほとんどしていないにもかかわらず、あたかも眼科医のようにコンタクトレンズ処方などをなさっておられる先生がおられるようです。このようなクリニックでは、患者さんの眼にトラブルが発生したときには、適切な対処を受けられない可能性もあります。あなた自身の眼を守るためにも、安心して任せられる眼科医をお探しになってください。
  なお、最近は眼科専門医の名前が公表されており、日本眼科学会のホームページhttp://www.nichigan.or.jp/index.jsp を閲覧すると専門医一覧が検索できるようになっています。